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陰流の開祖であり、忍びの術の開祖でもある愛洲移香斎の物語です。
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13.置塩城下






 太郎と八郎、そして、夢庵(ムアン)と牛の一行は無事、赤松氏の本拠地、置塩(オキシオ)城下に入れた。

 太郎と八郎が甲賀を出てから五日目だった。すでに、楓の一行、そして、阿修羅坊の一行は三日前に到着していた。

 楓はまだ、弟、赤松兵部少輔(ヒョウブショウユウ)政則と対面していなかった。

 政則は忙しかった。新しい城ができても、その城に落ち着く暇もなく、領国内を動き回っていた。

 三十年もの間、敵の山名氏に支配されていたため、赤松氏の支配を徹底させるのが以外と大変だった。山名氏と赤松氏をはかりに掛けて身の保全と利害を考え、どっちつかずにいる国人たちがかなりいた。政則はそういう所に出掛けて行かなければならなかった。出掛けて行って、どうのこうのするわけではないが、赤松家のお屋形様がわざわざ来てくれたというだけでも、国人たちの心をいくらかでも、こちらに向ける事ができた。

 政則は今、美作(ミマサカ)の国に行っていた。美作の国は北側が山名氏の領国、伯耆(ホウキ)の国(鳥取県西部)、因幡(イナバ)の国(鳥取県東部)と接しているため、山名贔屓(ビイキ)の国人たちが多かった。政則は美作の国を統一するために大勢の兵を引き連れて出掛けて行った。

 阿修羅坊は太郎坊の人相書を作らせ、瑠璃寺から手下を十人程呼び寄せて城下に入る入り口を固めた。街道は勿論の事、相手が山伏なので、入れそうな山は道のない所まで見張った。また、太郎坊が変装して来る可能性が充分にある事も注意をし、怪しい奴はすべて捕えろと命じた。そして、阿修羅坊自身は楓が滞在している別所加賀守(カガノカミ)則治の屋敷の回りを見張っていた。

 そんな中を、太郎は無事に通過して城下へと入って行った。何気なく道連れになった夢庵が一緒だったので大いに助かった。夢庵が一体、何者なのかは知らないが、彼と一緒にいる事で誰にも怪しまれる事もなく、播磨国内をすんなりと旅ができた。国境でもそうだったが、あちこちに設けられた関所を難無く通過する事ができた。太郎と八郎はただ、夢庵の後ろを付いて行けばいいだけだった。誰も何も聞きはしなかった。

 城下の入り口の大門には阿修羅坊の手下で、鉄の棒を使う山伏が見張っていたが夢庵を一目見ただけで、その後ろにいた職人姿の太郎など見向きもしなかった。

 置塩城は城下町を見下ろす置塩山の頂上にあった。南、西、北と切り立った崖や急斜面に囲まれ、東は山に連なっているが深い空濠が掘ってある。山上の城からは備前の国へと抜ける山陽道と、姫路から分かれて市川に沿って但馬の国へと抜ける街道が一望のもとに見渡せた。東側の山頂に藤の丸と呼ばれる本丸があり、その南西にやや離れて鷹の丸と呼ばれる二の丸を置き、その北に通路を兼ねた濠割をはさんで亜喜殿丸と呼ばれる三の丸があった。

 山の上の城を詰(ツメ)の城と言い、いざという時に使う実践用の城で、そこに住んでいるわけではなかった。山の裾野に立派な屋形(ヤカタ)が構えられ、普段はそこで生活していた。その屋形を中心に家臣たちの屋敷や寺院が並び、その回りに町民や職人、農民の家が並び、城下町を囲むように夢前(ユメサキ)川が流れていた。

 さらに、その城下町を囲むように支城や砦が並んでいる。城下の東の入り口を見張る番城、南の入り口を見張る清水谷城、西の入り口を見張る小屋谷城などがあり、夢前川をはさんで西側の鞍掛山(クラカケヤマ)の山頂には西南の守りとして鞍掛城があった。

 鞍掛城を守っているのは政則の叔父の中村弾正少弼(ダンジョウショウヒツ)正満であった。正満は吉野からの神璽(シンジ)奪回の時、鶏足寺に潜んで、政則の父、彦三郎を見守っていた新禅坊である。伊勢世義寺の山伏、東蓮坊と共に奥吉野に潜入して南朝と戦い、深手の傷を負ったが命だけは無事だった。赤松家が再興された後、応仁の乱でも活躍して赤松家の重臣の一人となっている。政則が置塩城を築城するのと同時に、この山に城を築いた。政則の母親、北の方様は正満の妹だった。

 番城には性具入道の弟、左馬助則繁の孫にあたる間島左馬助則光がおり、清水谷城には、同じく一族の赤松備前守永政、小屋谷城には、これもまた一族の嵯峨山土佐守高之が守っている。さらに、それらの城の外側の見晴らしのいい山々の上には砦を設けて守備を固めていた。

 太郎と八郎は松恵尼に言われていた通り、まだ新しい城下町の南、夢前川の側にある木賃宿(キチンヤド)『浦浪』という所に落ち着いた。

 夢庵はずっと一緒にいたが、太郎たちが『浦浪』という木賃宿を捜している隙に、急に姿が見えなくなってしまった。いつも、のんびりしていた夢庵が突然、消えてしまったかのように、どこにも姿が見当たらなかった。太郎は色々と世話になったお礼を言う事もできなかった。八郎は、まるで狐にでも化かされていたようだ、もしかしたら、夢庵は飯道権現の化身ではないかと不思議がっていた。

 『浦浪』には、旅の商人や芸人たちが、かなり滞在しているようだったが、今は皆、出掛けていていなかった。

 太郎と八郎は中庭に面した日当たりのいい一室に案内された。中庭の中央に井戸があり、隅の方に廐(ウマヤ)と蔵があった。そして、蔵の前の草の上に、のんびりと昼寝している研師、次郎吉の姿があった。

 次郎吉は昨日、ここに着いたと言う。すでに、薬売りの伊助、白粉(オシロイ)売りの藤吉も来ていると言った。白粉売りの藤吉というのは、太郎はまだ知らなかった。

 次郎吉より、太郎は楓の居場所と阿修羅坊の事を知らされた。阿修羅坊の手下がうようよいるので城下をうろつかない方がいいだろうと次郎吉は言ったが、自分がすでに、城下に入っている事を阿修羅坊はまだ知らないから、返って、安全だろうと太郎は八郎を連れて城下に出てみた。

 木賃宿『浦浪』は姫路から来た場合、城下の入り口に近かった。

 新しくできた大通りが夢前川に沿って北へと続いている。大通りの両脇の家々も皆、新しく、『浦浪』のある辺りには、町人の長屋や旅籠屋などが両側に並んでいた。しばらく行くと橋があり、橋を渡ると、そこは商人たちの町になった。大きな構えの店や土倉が大通りの両側に並んでいる。荷物を積んだ荷車や人々が行き交い、賑やかだった。

 町の中央辺りに、二本の大通りが交わる四つ辻があり、四つ辻の東側に大きな仁王門があった。その仁王門をくぐり、大通りを東に行くと天台宗の大寺院、置塩山大円寺へと通じる。西に行くと夢前川に出て、河原には船着き場と渡し舟があった。船着き場は瀬戸内海の飾磨津(シカマツ、姫路港)から、英賀(アガ)城、坂本城を経由して、この城下に物資を運び込む荷船の着く所で、渡し舟は川向こうの鞍掛城とをつないでいた。

 この大通りと平行に東側に通りが二本あり、手前の通りには下級武士たちの長屋や中級武士たちの屋敷などか並び、さらに奥の通りには重臣たちの屋敷が並んでいる。その重臣たちの屋敷に囲まれるようにして、城主、赤松政則の屋形が置塩山の裾野、一段高くなっている所に建てられてあった。城主が留守でいなくても厳重に警固されていた。

 太郎と八郎は大通りを端まで歩いてみた。

 城下のはずれに市場があった。今日は市は開かれていない。大通りと河原に挟まれた閑散とした広場に建ち並んでいる掘立て小屋には、乞食たちが住んでいた。

 市場の向こうに、城下の北側の出入り口になる大門が見えた。どうせ、そこにも太郎坊を見張っている阿修羅坊の手下がいる事だろう。

 太郎と八郎は引き返し、今度は武家屋敷の並ぶ通りの方に行ってみた。武家屋敷はどれも塀で囲まれ、門から中を覗いて見ると中央の庭を挟んで、五軒の屋敷が建てられ、大きな廐もあった。どうやら、中級武士たちの屋敷のようだった。塀に囲まれた同じような作りの屋敷が道の両脇に並んでいた。左側に並ぶ屋敷の屋根越しに、城主の屋形らしい大きな建物が見えた。

 こちらの通りは大通りと違い、人通りは少なかった。それも、歩いているのはほとんどが武士たちだった。時々、荷物を背負った商人が通る位で、用のない町人の姿はなかった。

 二人がキョロキョロしながら通りを歩いていると、一人の武士に声を掛けられた。

「おい、そこの職人、何をしておる」

 かなり年配の小柄の武士だった。

「はい。実は、別所加賀守殿のお屋敷を捜しております」と太郎は言った。

「なに、加賀守殿?」

「はい」

「加賀守殿に、一体、何の用じゃな」老武士はうさん臭そうに太郎と八郎を見た。

「はい、観音の像を彫ってくれと頼まれましたもので」

「観音の像? 加賀守殿が? 観音像なら大円寺じゃないかのう」

「良くはわかりませんが、とりあえず、屋敷の方に来てくれと言われましたが」

「加賀守殿が観音像をのう」と老武士は首を傾げた。

「おお、そうか‥‥‥もしかしたら、御料人様の用事かもしれんのう」と一人でぶつぶつ言うと、太郎に別所加賀守の屋敷の場所を教えてくれた。

 太郎と八郎は老武士に礼を言って別所加賀守の屋敷の方に向かった。別所加賀守の屋敷はお屋形の屋敷のすぐ前だと言う。もう一本、奥にある通りのさらに奥だと言う。

 別所加賀守が何者だか知らないが、赤松家の重臣である事は間違いなかった。そのまま別所加賀守の屋敷まで行きたかったが、阿修羅坊が出て来る恐れがあった。真っ昼間、こんな所で騒ぎを起こしたくはなかった。まずは楓に会い、楓の気持ちを確かめてからだ。楓に会うまでは、太郎がすでに、この城下に入っている事を阿修羅坊に気づかせたくなかった。阿修羅坊の手下どもを分散させたままにしておきたかった。

 太郎は別所加賀守の屋敷に近づくのをやめ、また、元の通りに引き返すと、その通りを真っすぐに歩いた。先程の老武士はいなかった。

「お師匠、別所加賀守の屋敷には行かないんですか」と八郎が声を掛けた。

「ああ、阿修羅坊がいるんでな」

「でも、お師匠、次郎吉殿の話やと、今、阿修羅坊は一人で別所屋敷を見張ってるんやろ。相手は一人や。やっつけちゃいましょ。お師匠なら絶対、大丈夫ですよ」

「ああ。だが、場所が悪い」と太郎は言った。

「どうしてや」

「阿修羅坊だけなら何とかなるだろう。しかし、こんな所で騒ぎを起こしたら、もし、阿修羅坊を倒したとしても、無事に逃げられるかどうかわからん」

「あ、そうか、そうやな‥‥‥」と八郎は辺りを見回した。考えて見れば、ここは敵地だった。皆、阿修羅坊の味方と見てよかった。

「お師匠、それじゃあ、いつ、やるんです」

「そう、慌てるな。まず、敵の事をよく調べてからだ」

「調べる?」

「ああ、陰の術を使ってな」

「陰の術か‥‥‥もしかしたら、あの城に忍び込むんですか」と八郎は振り返って山の上を見上げた。

「必要があればな。まずは、この城下の地形を頭に入れる事だ。どこに何があるのか、よく覚えておけ」

 中級武士の屋敷の次には下級武士の長屋が並んでいた。長屋の間を真っすぐ進んで行くと大通りにぶつかった。左側には、先程の老武士が言っていた大円寺らしい大きな寺院が見えた。右に行けば仁王門をくぐり、初めに歩いた大通りに出る。二人は大円寺の参道らしい大通りを横切って真っすぐ進んだ。

 武士たちの屋敷がなくなると、今度は簡単な柵に囲まれた町人たちの長屋が右側に並んでいた。左側は高い塀がずっと続いている。塀の中に何があるのかわからなかった。長屋で洗濯物を取り込んでいたおかみさんに聞いてみると射場(イバ)だと教えてくれた。塀の中で、侍たちが弓矢や槍の稽古をしているとの事だった。

 射場を過ぎると左側に賑やかな一画が現れた。派手な作りの遊女屋が道の両側に並んでいる。富田山性海寺(ショウカイジ)に通じる表参道だと言う。大円寺の表参道は武家屋敷の中にあり、何となく重々しい雰囲気だったが、こちらの参道は賑やかで、飯道山の門前町と似ていた。

 二人は遊女屋を横に眺めながら、さらに真っすぐと進んで行った。橋を渡ると、今度は職人たちの町になった。鍛冶師、研師、檜物師(ヒモノシ)、木地師、鎧師、畳刺(タタミサシ)、鞍作(クラツクリ)、弓師などが並び、通りに面していたのは主に武器関係の職人たちが多かった。

 さらに真っすぐ進むとたんぼが広がり、たんぼの中の一本道を進むと、先の方にこんもりとした森が見えて来た。その森は八幡神社だった。八幡神社の少し先に細い道があり、山の中へと続き、奥の方にも白旗神社という神社があるらしかった。

 太郎と八郎は真っすぐ進んだ。やがて、大通りに出た。それは、街道へと続く最初の大通りだった。そして、そこは南側の入り口、大門の近くだった。木賃宿『浦浪』へも近い。二人は城下の中をほぼ一回りして戻って来たというわけだった。

 まだ、日は高かった。宿に帰っても別にする事もない。

 二人は大通りを横切って夢前川の方に向かった。大通りに面して大きな屋敷が一つあるだけで、この辺りには何もなかった。夏草の生い茂る荒れ地を抜けると広々とした河原に出た。

 カラスが騒ぎながら飛んでいた。その上空では鳶(トビ)が優雅に飛んでいる。

 夢前川には渡し舟があり、川向こうの道へとつながっていた。河原にはいくつかの筵(ムシロ)掛けの小屋が立っていた。川の側で、何人かの人たちが何やら作業をしていた。

「エタや」と八郎が言った。

 よく見ると、彼らは牛の死体を解体している所だった。側には剥ぎ取った皮が並べて干してあり、三匹の犬が餌にありついていた。

 彼らはエタ、皮屋、河原者などと呼ばれて賤民視されているが、彼らが作る皮革は、この時代、非常に需要の高いものだった。兵器の材料として、また、衣料として、皮革は武士にとって軍事的になくてはならない物だった。大名たちは必ず、彼らを城下のはずれに住まわせ、皮革の製造をさせていた。

 当時、エタと呼ばれていたのは、彼ら、革を作る者たちだけではなく、河原に住んでいる者たちや町のはずれ、貴族や寺社の荘園の片隅、寺院や神社の片隅に住んでいる賤民たち、すべてがそう呼ばれていた。

 元々、エタとはキヨメと呼ばれる人たちの事だった。昔、京の都の賀茂川の河原にキヨメと呼れる掃除人夫が住んでいた。彼らは京の都の掃除や井戸掘り、または、死人の片付け、死んだ牛馬の片付けなど穢(ケガ)れの多い仕事に携わっていた。それらの仕事は一般の人々にはする事ができず、キヨメと呼ばれる人々だけが、その穢れを清める事ができると考えられていた。都人にとって、彼らはなくてはならない存在だった。

 彼らは寺院の掃除も行なっていた。僧侶たちによって、彼らは穢れを清める者、穢手と呼ばれ、やがて、穢多と呼ばれるようになった。その呼び方が貴族たちの間に広がり、庶民たちの間にも広まって行った。ただ、庶民たちはエタという意味もわからずに、侮蔑の気持ちを込めて、彼らをそう呼んでいた。

 年が経つにしたがって、河原に住むエタたちも分業して行った。革を作る者たちはそれを専門にやるようになり、掃除人夫は掃除や土木建築の人足になり、その他、井戸掘り、染工、乞食、芸人などに分かれて行った。

 後に江戸時代になって身分制度が確立されると、エタと言うのは革作りの者たちを指す言葉となり、他の者たちは非人と呼ばれて区別され、エタの下におかれるようになった。彼らは江戸時代の二百五十年間、その身分制度から抜け出す事ができなくなり、明治時代に一応は解放されるが、未だに差別は続いている。この当時は、人々から賤民視されてはいても、そこから抜け出そうと思えば抜け出す事はできた。

 戦国時代に河原者から成り上がった者たちに、猿楽の能役者や作庭家、立花師(タテバナシ、後の華道)、連歌師などがいた。彼らは身分が低いため出家して阿弥号を名乗り、将軍の側近衆にまでなって行った。出家してしまえば俗世間の身分制度から解放され、身分の高い者とでも同席が許されると考えられていた。また、足軽になって活躍し、武士になった者もいるし、土地を手に入れて農民になった者、商人や職人となった者もいた。

 その中で、革作りの者たちは代々、その仕事に就く者が多かった。彼らは特殊技能者で革を作る事は彼らにしかできなかった。武士たちは必要な革を確保するため、死んだ馬や牛を処理する権利を彼らだけに与え、一般の者たちが革を作る事を禁じた。

 戦国乱世となり革の需要は益々、高まって行った。彼らは自分たちを保護してくれる武士に年貢として、毎年、決まった枚数の革を納め、余った革を売りさばいて、かなりの収入を上げるようになって行った。生活も農民たちより安定しており、人々からは蔑(サゲス)みの目で見られても、今更、職を変える必要もなかった。

 彼らの仕事は江戸時代の初期まで順調だった。しかし、やがて太平の世となり、革の需要は下がって行った。生活も苦しくなり職を変えようかと思ったが、その時はすでに遅く、徳川政権下の厳しい身分制度の中から抜け出す事はできなかった。

 今、太郎たちの前で牛の皮を剥いでいる者たちは、自分たちのそんな運命など勿論、知らない。ただ、与えられた仕事をしているだけだった。

 太郎はエタたちの方に近づいて行った。

「お師匠、奴らに近づかん方がええ」と八郎は注意した。

「なぜだ」と太郎は聞いた。

「奴らは、よそ者を近づけんのや」

「どうして」

「それは知りまへんけど、奴らは何をするかわからんのや」

 八郎が育った多気の都にもエタはいた。百姓だった八郎は子供の頃から、エタには近づくなと言われて育てられて来た。子供の頃はどうしてなのかわからなかったが、物心付くようになると、回りの百姓たちと同じく、彼らを偏見の目で見るようになっていた。

 太郎は八郎が止めるのも聞かず、牛を解体しているエタたちの方に向かった。近づくに連れて、牛の死体の臭いが鼻に付いてきた。うるさい程、ハエが飛び回っている。

 太郎が近づいて行くと牛の解体をしていた者たちは手を止め、一斉に太郎の方を向いた。その目は睨んでいるわけではないが、ぞっとするような冷たい視線だった。八郎の言う通り、よそ者を拒絶している目だった。

「やあ」と太郎は努めて明るく挨拶をして、そのまま近づいて行った。

 八郎は太郎の後を恐る恐る付いて来ていた。

 突然、石つぶてが太郎めがけて飛んで来た。太郎は杖をほんの少し動かして、その石つぶてを杖で弾き返した。そして、何事もなかったかのように、そのまま進んだ。

 また、石つぶてが飛んで来たが、前と同じく、何気なく杖で避けた。

 次に飛んで来たのは小刀だった。これも、太郎は杖で簡単に弾き飛ばした。

 太郎は、それらが飛んで来る方を見てはいない。ただ、解体されている牛の方を見ながら普通に歩いているだけだった。

 弾き飛ばされた小刀が河原に落ちた。それは普通の小刀とは違い、獣の皮を切るのに使う、頑丈な包丁のような物だった。

「何者じゃ」としわがれた声がした。

 太郎は立ち止まり、声の方を向いた。

 革の袖無しを着た背は低いが、ごつい体つきの男がやはり、冷たい目付きをして太郎を見ていた。その男は片目だった。左目を革の眼帯で隠していた。

「われは何者じゃ」と片目の男は言った。

「仏師だ」と太郎は言った。

「仏師じゃと? 仏師が何の用じゃ」

「別に用はない。ただ、牛の腹の中がどんな風になっているのか見せてもらいたいだけだ」

「何じゃと? 牛の臓腑(ハラワタ)が見たいじゃと? そんな物を見てどうする」

「天神様の牛を彫ろうと思ってるんだが、どうも、うまくいかん。臓腑がどうなっているのかわかれば、うまく彫れるかもしれんのでな」

「変わった野郎だ。おい、見せてやれ」

 片目にそう言われると、成り行きを見ていたエタたちは、また、作業を始めた。太郎は側まで行って牛が解体される様子を見ていた。鼻をつまみたくなる程、臭かったが、太郎は我慢して、ずっと見ていた。八郎はちらっと見ただけで、後ろに下がり、師匠は一体、何を考えているのだろうと鼻をつまみながら太郎の姿を見ていた。

 エタたちは見事な手捌(サバ)きで牛を解体していった。臓腑を取り出し、皮と肉を切り放し、肉は細かく切り刻まれた。

 切り刻まれた肉は鷹(タカ)の餌となった。領主の赤松政則が鷹狩りを好み、城内には何羽もの鷹が飼われていた。鷹を養うためには毎日、決まった量の肉が必要だった。うまい具合に、死んだ牛や馬があればいいが、なければ、犬を殺してでも鷹の餌を用意しなければならなかった。

 鷹は好んで肉を食べたが、当時の人々は牛の肉は食べなかった。当時の人々が食べなかったのは牛の肉ばかりではない。仏教思想のお陰で、獣の肉はほとんど食べなかった。豚は元々、日本には少なかったが必要のない動物として、この頃、ほとんど姿を消してしまっていた。鶏は愛玩用、鑑賞用として飼われるだけで、肉は食べず、卵さえ食べなかった。ウサギだけは例外として、古くから、ずっと食用とされていた。

 一通り、見終わると、太郎はその場を離れた。

 太郎は前に、智羅天に見せてもらった人体の図を思い出していた。牛の体の中を見て、牛の体も人間の体も同じようなものだと思った。あんな物が自分の体の中にも詰まっているのか、と不思議な思いがした。

 太郎がそのまま、帰ろうとすると、「おい、若いの」と例の片目が声を掛けて来た。

「どうじゃ、牛の臓腑を良く見たか」

「はい」と太郎は答えた。

「われも変わった奴よのう。あんな物を真剣に見ている奴など初めてだわい」

「人を解体する事はないのか」と太郎は片目に聞いた。

「何だと? ふざけるな、人など解体するか」

「そうか‥‥‥」

「今度は、人の体の中が見たくなったのか」

「ああ」と太郎は頷いた。

「時々、罪人の首は斬るがのう。解体などせんわ。もう少し下流に行ってみろ。この夢前川に流れ込む川にぶつかる。その川をさかのぼって行けばサンマイ(葬送地)がある。そこに行けば、いくらでも人の死体が転がっておる。好きなのを選んで解体して見るがいい」

「この下流だな」と太郎は下流の方を見た。

「われ、本当にやる気か」

「ああ、悪いか」

「わしは知らん。罰が当たっても知らんぞ」

「気にするな。地蔵さんを彫って成仏させてやる」

「われは一体、何者じゃ」

「仏師だ」

「ただの仏師ではあるまい」

「もと山伏だ」

「成程‥‥‥どこの山伏じゃ」

「大峯だ」

「ほう、大峯の山伏が何の用で、こんな所に来た」

「大峯の山伏が用があって来たのではない。仏師として用があって来たんだ」

「仏でも彫りに来たのか」

「そうだ。別所殿に観音像を頼まれての」

「なに、別所殿に頼まれた? うーむ、われは見た所、まだ若いが、余程、腕の立つ彫り師だとみえるのう」

「それ程でもない」

「われは名は何という」

「三好日向」

「わしはこの河原を仕切っている銀左衛門じゃ。人は片目の銀左と呼んでおる。何かあったら訪ねて来るがいい」

「片目の銀左殿か‥‥‥」

 太郎は銀左と別れると、八郎を連れて、夢前川の上流の方に歩いて行った。

「サンマイは下流じゃぞ」と銀左が後ろから声を掛けた。

「今日は日が悪い」と太郎は答えた。

「フン」と銀左は鼻で笑うと、皮剥ぎの作業をしているエタたちの方に行った。

 太郎と八郎は河原を一通り見てから木賃宿に戻った。

 河原には革作りの他に、紺屋(コウヤ)と呼ばれる染め物屋、乞食や流民(ルミン)、聖や巫女(ミコ)、城下建設のための土木建築作業の人夫、辻君(ツジギミ)、立君(タチギミ)などと呼ばれる遊女などが粗末な小屋を掛けて住んでいた。また、高瀬舟の出入りする船着き場の回りには、芸人たちの見世物小屋が並び、猿楽の立派な舞台もあり、居酒屋、料亭、遊女屋などが並んで、賑やかに栄えていた。

 芸人たちを眺めながら、明日あたり、金勝座の連中も到着するだろうと太郎は思った。





 東の空に下弦(カゲン)の月が出ていた。

 丁度、番城の本丸の上に月は浮かんでいた。

 太郎は久し振りに武士の姿になって、大小二刀を腰に差し、城下の大通りを歩いていた。武士といっても浪人や下級侍ではなく、重臣たちの屋敷の辺りを歩いていてもおかしくないような、かなり身分の高そうな侍に化けていた。五ケ所浦にいた頃は水軍の大将の伜として、当然の事のようにこんな格好をしていたが、久し振りにこんな格好をしてみると、何となく照れ臭かった。

夕暮れ時で、まだ、暗くはないが、通りに人影は少なかった。太郎は真っすぐに別所加賀守の屋敷に向かっていた。

 一時(二時間)程前、夢前川の河原から木賃宿に戻ると、伊助と次郎吉、そして、藤吉が太郎の帰りを待っていた。

 初めて見る藤吉は三十前後の小柄な男だった。本人には悪いが、何となく鼠のような顔をしていた。彼は伊勢の白粉売りだという。今日、早速、別所屋敷に白粉を売りに行ったが、楓に会う事はできなかった。しかし、元気に遊んでいた百太郎の姿をちらっとだが見る事ができたと言った。楓も百太郎も無事な事は確かだった。

 もう一人、太郎の知らない男がいた。松恵尼の手下の一人で、刀剣を扱う商人、小野屋喜兵衛という男だった。もう二年も前から、この城下にいて刀剣の取引きをしていると言う。馬のように長い顔をした四十前後の男だった。

 太郎はその喜兵衛という男と伊助から、城下の事や楓の事など必要な事を聞き出した。別所屋敷の中の楓の居場所も大体わかった。阿修羅坊の手下の山伏たちがどこに隠れて、太郎が城下に入って来るのを見張っているのかも調べてあった。

「それにしても、よく、阿修羅坊の見張りの中をかいくぐって無事に城下に入れたものですな。例の陰の術を使ったわけですか」と伊助は不思議そうに聞いた。

「いえ。ただ、運が良かっただけですよ」と太郎は言って、どうやって入って来たかを伊助たちに説明した。

「その御仁は、確かに、夢庵殿と申すのですな」と喜兵衛が聞いた。

「ええ、金色の角をした牛に乗った変わった男です」

「間違いなく、それは夢庵肖柏(ショウハク)殿です」

「一体、何者です、その夢庵肖柏殿というのは」

「茶の湯のお師匠です。村田珠光(ジュコウ)殿、直々のお弟子さんです」

「村田珠光殿?」

「はい。村田珠光殿は将軍様の茶の湯のお師匠です。今は戦を避けて奈良におられます。わたしも伊賀にいた頃、お茶を扱っていたので何度かお会いした事がございますが、もう、引っ張り凧の有り様でした。奈良では武士から町人に至るまで皆、茶の湯に熱中しております。夢庵殿はその珠光殿の一番弟子と言われている程の茶の湯の名人です。しかも、出自はお公家様で、和歌や連歌にも詳しく、身分もかなり高いお人です。若い頃から宮廷や幕府に出入りして、管領の細川殿とも親しく、戦が始まってからは、京を出て摂津に隠棲なさいました。ここのお屋形様、兵部少輔殿も夢庵殿の飄々とした所がお気に入りになられて、城下に呼んではお茶会やら連歌会などを開いております。多分、今回、城下に来られたのは楓殿の披露の式典の事で色々と相談したい事があって呼ばれたのでしょう。夢庵殿は公家や幕府の式典の作法とか礼法などにも色々と詳しいですからな」

「ほう、そんなお人と道連れになるとは太郎坊殿も運がいい人じゃ」と伊助は笑った。

 確かに、伊助の言う通りだった。もし、夢庵と一緒でなかったら、この城下の入り口まではもう少し早く着いたかもしれないが、城下に入るのに手間取った事だろう。まして、阿修羅坊の手下どもとやり合い、騒ぎを起こしてしまえば、この城下に滞在する事も難しくなって来る。牛の歩みに合わせて、のんびりと旅をして本当に良かったと思った。

 太郎は今晩のうちに別所屋敷に忍び込み、楓と会う事に決めていた。それを助けるため、八郎と伊助、次郎吉の三人が太郎坊に扮して、夕暮れ時、一斉に城下に入るという手筈になっていた。どこかに太郎坊が現れたと聞けば、阿修羅坊は別所屋敷から姿を消すだろう。その隙に太郎が別所屋敷に忍び込むという作戦だった。

 さっそく、八郎、伊助、次郎吉の三人は山伏の支度を荷物の中に隠して城下を出て行った。三人はただ、城下に入るだけではなく、この先、邪魔になる阿修羅坊の手下をできるだけ倒してしまおうとしていた。

 武士の姿になった太郎は武家屋敷の建ち並ぶ中を歩いていた。道の両側に赤松家の重臣たちの立派な屋敷がずらりと並び、どこの門の前にも警固の兵士たちが見張りに立っている。城主、赤松政則の屋形は石垣を積んで少し高くした所に、白壁の塀に囲まれて建てられてあった。立派な門の前には槍を持って武装した大男が二人、通りの方を睨んでいた。

 屋形の南隣に評定所(ヒョウジョウショ)があり、仕事帰りの侍たちが屋形の前の道を行き交っていた。

 太郎はその人込みに紛れて、それとなく屋形を観察した。目指す別所加賀守の屋敷は、その屋形の斜め前辺りに位置していた。

 屋形の西側に四軒の屋敷が並んでいる。北から浦上美作守、依藤(ヨリフジ)豊後守、小寺(コデラ)治部少輔、上原対馬守の屋敷と並び、上原対馬守の屋敷の裏側に別所加賀守の屋敷があった。

太郎は場所を確認すると別所屋敷の門の前を素通りして行った。数人の警固の兵士が門の前で無駄話をしていたが、阿修羅坊の姿は見当たらなかった。

 太郎はそのまま真っすぐ進み、大円寺の参道に出ると大円寺に向かった。二天門をくぐり、広い境内に入ると木陰に身を隠し、合図の法螺(ホラ)貝が鳴るのを待った。

 それ程、待たないうちに法螺貝は鳴った。まず、八郎がいるはずの北の方から聞こえて来た。太郎は、もうしばらく、その場で待った。やがて、今度は東の方から法螺貝の響きが聞こえて来た。東には次郎吉がいるはずだった。

 太郎はゆっくりとした足取りで、別所屋敷に向かった。

 通りには、それぞれの屋敷の警固の兵士たちが法螺貝の音を聞き、一体、何事だと北の置塩城を見上げたり、東の山の方に目をやっていた。

 阿修羅坊の姿はなかった。

 太郎は別所屋敷の裏通りを通り、南隣の喜多野飛騨守の屋敷との間の通りに入った。

 人影はなかった。

 表門と裏門のある通りには塀に沿って小川が流れていたが、この通りには何もなかった。塀の高さも一間(ケン)ちょっと(約二メートル)、塀の上に簡単な屋根が付いているが、その屋根の上に障害物は無さそうだった。

 太郎は素早く、塀を乗り越えた。

 塀の中の庭は暗かった。しばらく、木の陰に隠れて中の様子を窺った。

 すぐ側に池があり、屋敷は北と東の塀に沿って、くの字に建てられ、南側から西側にかけて広い庭園になっていた。庭園といっても、まだ未完成のようで、山があり、池はあるが何となく殺風景な庭だった。塀に沿って木が植えられ、処々に変わった形の石が置いてある。その石はとりあえず、そこに置いた、というだけのもので、改めて、決まった位置に並べるつもりなのだろう。

 閉じられた裏門の辺りに廐があり、その隣に家来たちの長屋らしき建物があった。その前に井戸があり、二人の人影が見えた。庭の中には見張りらしき者の姿はなかった。

 楓たちのいるのは南の客殿だと聞いていた。楓と百太郎は、桃恵尼と京から連れて来た侍女五人と一緒に客殿にいると言う。多分、すぐそこに見える御殿のような建物がそうに違いない。明かりの中に人が動いている影が見えた。ちょうど夕餉の時なのだろう、何となく慌ただしい人の声や物音が聞こえて来た。

 太郎は木に隠れながら右の方に移動した。客殿の向こうに表門が見えた。表門の側に槍を持った二人の侍の姿が見える。二人の侍は門の外に出て行き、代わりに別の侍が二人、入って来て、侍たちが待機している長屋のような建物がの中に入って行った。

 門番の食事交替だろうか、長屋の入り口の戸は開いているが中までは見えなかった。少なくても十人位の侍がいそうだった。

 太郎は物陰沿いに南の客殿に近づき、縁の下に忍び込んだ。

 もう少し静かになるまで、このまま待とうと思った。太郎は横になって耳だけを澄ましていた。

 やっと、楓と百太郎に会う事ができる‥‥‥二ケ月近くも会っていない。

 楓御料人様か‥‥‥

 楓がこの城下のお屋形の姉君だとはな‥‥‥まったく、驚きものだ。こんな御殿のような家に住んで、うまい物を食べて、綺麗な着物を着て、毎日、のんびりと歌でも歌っているのかな‥‥‥楓には似合わない。薙刀を振り回していた方が似合う。しかし、誰だって贅沢な暮らしに憧れる。働かないで生きて行けるのなら、その方がずっと楽だ。ここにいれば、今までのように朝から晩まで働かなくても済む。みんなからかしずかれ、ちやほやされて暮らしていればいい‥‥‥

 楓は一体、どう思っているのだろう‥‥‥

太郎はうるさい蚊に悩まされながらも、半時程、待ち、五ツ(午後八時)の鐘の音を聞くと動き出した。辺りは静まり返っていた。

 藤吉から、桃恵尼という楓の側に仕える尼僧を通して、太郎が今晩、ここに来るという事は伝えてあるはずだった。楓は待っている事だろう。

 太郎は縁の下から出ると木陰に隠れ、客殿の方を見た。明かりは見えるが人影は見えなかった。客殿はかなり広そうだった。部屋がいくつもあるようだ。楓と百太郎がどこにいるのかはわからない。蒸し暑い夜なので板戸や障子は開けられてあっても、簾(スダレ)や屏風(ビョウブ)が邪魔していて部屋の中までは見えなかった。どこからでも入ろうと思えば入れるが、見つかる可能性も高かった。

 さて、どこから忍び込んだらいいものかと考えていると、部屋の中で人影が動くのが見えた。人影は庭の方に近づいて来た。簾をくぐると廊下から庭の方を窺っていた。

 楓であった。贅沢な着物を着てはいるが、楓に間違いはなかった。

 太郎はかつて、花養院に忍び込んで楓に合図をした時のように、小石を楓に向かって投げた。楓は合図に答えて、太郎の方を向いた。

 楓は廊下の端まで行くと庭に降りて来た。

 太郎は木陰に隠れながら、楓が近づいて来るのを見ていた。

 会いたかった‥‥‥

 楓が自分の前から消えてからというもの、楓という女が自分にとって、どれ程、大事な存在なのか、痛い程、感じていた太郎だった。

 楓は回りを警戒しながら太郎の側まで来ると立ち止まり、じっと太郎の顔を見つめた。

 二人は何も言わず、ただ、見つめ合っていた。

 やがて、楓の目から涙が溢れて流れ出した。

 楓は太郎に抱きついて来た。太郎は楓を強く抱きしめた。

「会いたかったわ‥‥‥」楓は太郎の胸に顔をうづめたまま言った。

「俺もさ‥‥‥」

二人はしばらく無言のまま抱き合っていた。

 ようやく落ち着くと、「百太郎は元気か」と太郎は聞いた。

 楓は頷き、「元気よ。でも、あなたに会いたがってるわ」と言った。

「もう、寝たのか」

「ええ。別所様にも丁度、百太郎と同じ年頃の男の子がいてね、小三郎さんて言うんだけど、よく一緒に遊んでるわ。ここの奥方様も気さくで感じいい人よ」

「そうか、みんな、元気なんで安心したよ」

「あたし、あなたが死んだって聞いたわ。あなたに限って、そんな事はないと思っていたけど心配だった」

「俺も聞いたよ、俺はどこかの高貴なお方で、戦で戦死した事になっているんだろう」

「そうよ。あたし、そんな事、全然知らなかったわ。この間、無理やり、仲居さんの口から聞き出して、びっくりしてたのよ」

「しかし、俺の命が狙われているのは確かだ」

「えっ、どうして、あなたが狙われるの」

「邪魔だからさ。ここのお屋形様の姉君に亭主はいらないのさ。しかも、亭主が山伏だなんて、格好がつかないだろう」

「あなたが武士に戻ればいいんじゃないの」

「駄目さ。愛洲氏と赤松氏では格が違い過ぎる。どこかの高貴なお方で、すでに死んでいるという事にした方がうまく行くんだろう」

「それじゃあ、どうすればいいの」

「お前はどうする気なんだ」

「あたしは早く、花養院に帰りたいわ」

「弟に会わなくてもいいのか」

「それは、一度は会ってみたいけど、このまま、ここにいる気はないわ」

「わかった。とにかく、会うだけは会ってみろ。その後、ここから逃げ出そう」

「でも、会ってしまったら、ここから逃げ出すのは難しいんじゃないかしら」

「それは今でも同じさ。今、逃げ出したとしても、また、連れ戻されるだけだ」

「それじゃあ、どうすればいいの」

「大丈夫だ。考えがある。必ず、お前たちをここから助け出してみせる」

 楓は太郎の顔を見つめて、頷いた。

「待っていてくれ」と太郎は言った。

「気を付けてね。絶対に死なないでよ」

「大丈夫だ」と太郎は力強く頷いた。

「百太郎に会って行く?」と楓が客殿の方を振り返りながら聞いた。

「大丈夫なのか、入っても」

「大丈夫よ。みんな、眠ってるわ」

「眠ってる?」

「白粉売りの人が持って来た、変わったお茶を飲ませたら、みんな、眠っちゃったわ。よく知らないけど、琉球のお茶だとか言ってたわ」

「お前は飲まなかったのか」

「ええ、眠ってしまうから絶対に飲むなって、書いてあったの」

「書いてあった?」

「ええ、あたしが、直接、その白粉売りの人に会ったわけじゃないの。桃恵尼さんが会って、そのお茶を持って来てくれたのよ。お茶の入れ物の中に紙が入ってたの」

「成程、お茶の中に眠り薬が入っていたんだな‥‥‥松恵尼殿の手下の人たちは、まったく、よくやってくれるよ。松恵尼殿こそ、本当の『陰の術』の師匠だな」と太郎は笑った。

「ほんとね」

 太郎は楓の後に従って客殿に上がった。

 楓の部屋は西南の角の庭に面した六畳間だった。

 この客殿は大きく二つに仕切られ、それぞれが四部屋に分かれていた。楓たちがいるのは西側の方で、東側の方には今は誰もいない。

 楓たちの東隣の八畳間に五人の侍女たちがいた。侍女たちは思い思いの所で倒れるように眠っていた。三人の侍女は若く、二人は年増だった。

 桃恵尼の部屋は北隣にある四畳半らしいが、今は楓たちの部屋で、寝ている百太郎の布団の側で眠っていた。

 見張りの者は特にいないと言う。別所加賀守は太郎の事を知らない。楓が逃げるはずはないと思っている。お屋形の姉上に迎えられて贅沢な暮らしをしているのに逃げるわけはないと思っていた。

 楓たちは屋敷の中は自由に動き回れるが外には出られないと言う。外に出られたとしても、遠く、播磨の地まで来てしまえば逃げようとしても無理だった。ただ、太郎が来てくれるのを、ずっと待っていたと言う。

 久し振りに百太郎の寝顔を見ながら、楓から別所加賀守の事や、その他の赤松氏の家臣の事などを聞いた。太郎は楓に、今、この城下に来ている味方の者たちの事を話した。

 お互いに話したい事は一杯あった。別れがたかったが太郎は楓と別れた。

 塀から外を覗くと通りに見張りがいた。阿修羅坊の手下の山伏が太郎坊が城下に入った事を知り、この別所屋敷に集まって来たのだろう。ちょっと長居し過ぎてしまったようだ。太郎坊がすでに屋敷の中にいるとは思っていないので屋敷の回りを見張っているが、出るのは難しかった。

 太郎は月を見上げた。雲で隠れる気配はなかった。

 塀で陰になる北側の路地の方に向かった。西側の塀に沿って木に隠れながら閉じられた裏門を過ぎ、廐と塀の間の細い路地を抜けて裏に出ると大きな蔵があった。蔵の裏に入って北西の角から塀の外を窺った。西の裏門の辺りに、見張りが一人いるが阿修羅坊ではないようだった。北側には誰もいなかった。

 太郎は静かに塀を乗り越え、路地に下りると、塀の陰に隠れながら、そのまま表門の方に進んだ。塀の陰から表通りに出ると、別所屋敷の方は見ないで、別所屋敷とは反対の方に酔った振りをして、ふらふらした足取りで歩いて行った。

 誰も跡をつけては来なかった。中級武士たちの屋敷が建ち並ぶ一角を通り抜け、大通りに出て、大通りを酔っ払った振りをしながら、無事に木賃宿『浦浪』までたどり着いた。

 すでに、阿修羅坊は太郎が城下に入った事を知っている。今頃、血眼になって捜し回っているに違いない。これからは、いつ、狙われるかわからない。充分に注意しなければならなかった。





 朝靄(モヤ)がゆっくりと川の上を流れている。

 今、夜が明けようとしていた。

 夢前川の河原に、二人の山伏の姿があった。二人の他に人影は見当たらない。

 城下よりかなり下流の河原だった。側には市が開かれる場所があり、いくつかの掘立て小屋が立っているが乞食さえもいなかった。

 この城下には市場が二ケ所あった。北と南のはずれにあり、北の市場が四の付く日に開かれる四日市、南の市場は九の付く日に開かれる九日市だった。今日は七月二十四日、北に市の立つ日だった。

 すぐ側に城下の南側の入り口の大門が見える。ここも一応、城下の中だが、この辺りには人家はなく田や畑が広がっていた。ここからは死んだ者を葬るサンマイ(葬送地)も近い。城下の中心近くの河原には乞食や河原者たちが小屋掛けをして住んでいるが、この辺りに住んでいる者はいなかった。また、住んでいる乞食がいたとしても、今日は皆、北の市場の方に行っているに違いなかった。

 一人の山伏は川辺に座り込んで、川の流れを見ていた。もう一人の山伏は川と反対の大通りの方をキョロキョロと落ち着きなく眺めている。

 二人の山伏は太郎と八郎だった。

 夕べ、楓と会った太郎は木賃宿に戻ると、待っていた仲間たちに楓の事を話し、太郎坊に化けた伊助、次郎吉、八郎の話を聞いた。

 三人の話によると阿修羅坊の手下、八人は倒したと言う。阿修羅坊が最初から連れていた二人のうち、吹矢を使う男は次郎吉が倒した。太郎も一度、面識があるだけに、気の毒な事をしたと思った。気の毒だが仕方がなかった。放っておけば太郎自身の命が危ない。向かって来る者は倒さなくてはならなかった。

 はっきりとはわからないが、残るは阿修羅坊と四、五人の手下どもだろうと伊助は言った。どうせ、やらなければならないのなら、いっその事、早いうちに片付けてしまおうと、朝早くから、太郎は八郎を連れて、こうして、阿修羅坊たちが出て来るのを待っていたのだった。

「阿修羅坊は来ますかね」と八郎は市場の方を見ながら太郎に聞いた。

「絶対に来るさ。俺がどこに消えちまったのか必死で捜しているはずだ。誰かが必ず、ここに来るはずだ」

「まさか、阿修羅坊は侍たちを連れては来ないやろうな」と八郎は心配した。

「多分、来ないだろう」と太郎は言った。「俺の考えだが、まだ、俺の存在というのは、こちらの連中には知らせてないと思う。多分、浦上は阿修羅坊に、俺がこの城下に入る前に殺せ、と命じたのだろう。阿修羅坊はこちらの連中が気づく前に俺を片付けなければならない。そうしないと、浦上の顔を潰す事になる。阿修羅坊は自分の手下だけを連れて、ここに来るはずだ」

「そうか‥‥‥という事はや、阿修羅坊さえ、いなくなれば、お師匠はこの城下では安全というわけやな」

「浦上が気づくまではな」と太郎は苦笑した。

「当分、気づかんて、浦上とやらは京にいるんやろ」

「だといいがな。浦上の下で動いているのは阿修羅坊だけじゃないかもしれんぞ」

「他にもいるんかいな」

「わからんさ。あの浦上という男はなかなかの曲者(クセモノ)だ」

「ふうん‥‥‥ところで、ここのお屋形様は、いつ、帰って来るんやろ」

「わからんな。伊助殿の話だと、半月位待っていれば戻って来るだろうとは言うが、今、美作の国にいるらしいからな。一月は覚悟しておいた方がいいだろうな」

「一月か‥‥‥一月もここにいるんですか」

「いや。その一月の間に例のお宝を捜し出さなくてはならん」

「そのお宝と、お師匠の奥さんとお子さんを交換して、甲賀に帰るんですね」

「うまく、行けばな」

「きっと、うまく行きますよ」と八郎は気楽に言って笑った。

 靄が消え、東の山の上に朝日が顔を出して来た。

 今日も一日、暑くなりそうだった。

 その時、二人の乞食がのそのそと現れた。市場の掘立て小屋の陰に隠れ、太郎と八郎の方を窺っていた。ぼろ切れをまとい、見るからに臭そうな二人だったが、よく見ると伊助と次郎吉の二人だった。

 太郎は二人に今朝の事を内緒にしていた。言えば、付いて来る事がわかっていたので喋らなかった。八郎と二人だけで阿修羅坊を片付けようと思っていた。伊助たちには世話になりっ放しだったので、阿修羅坊だけは自分の手で倒したかった。また、倒さなければならないと思っていた。しかし、伊助は夕べの太郎の表情から今朝の事を読み取り、太郎と八郎が朝早く出掛けて行くのを次郎吉と一緒にこっそりと後を付けて来たのだった。

「くせえなあ」と小屋の中に隠れると次郎吉が鼻をつまんだ。「何も、馬糞にまみれる事もなかろうが」とぶつぶつ言っている。

「似合っとるぞ」と伊助は笑った。

「アホぬかせ」

「わしらは太郎坊殿を守らなけりゃならねえんじゃ」

「そりゃ、わかるがの、何もこんなきったねえ格好までしなくもよかろうが」

「市のない日の市場には乞食しかいねえんじゃ。他の格好をしていたら怪しまれる」

「こんな朝っぱらから、こんな所に来る奴はいねえわ」

「阿修羅坊が来る。乞食の格好をしていれば怪しまれずに近づく事ができるんじゃ」

「まあ、そうだがな」と次郎吉は汚い筵(ムシロ)の中から刀を取り出した。「阿修羅坊はわしがやるぜ」

「どうかな、太郎坊殿がやるんじゃねえのか」

「強いとは聞いているがの、まだ、若え。阿修羅坊の相手はつとまらんじゃろうよ」

「そうかな、まあ、それは成り行きに任せるとして、あの二人とやり合う前に阿修羅坊の手下どもは、なるべく多く倒しておいた方がいいな」

「なに、あの二人には見物していてもらえばいいさ」

 伊助はニヤニヤしながら次郎吉を見た。「次郎吉さんよ、随分と張り切ってるじゃねえか」

「俺は、この城下が気に入ったんだよ」

「この色男が、さっそく、いい女子(オナゴ)を見つけたな」

「まあな」と次郎吉はニヤリと笑う。「この城下には、なかなか、いい女子がおるわ」

「ほう、そうかね。まあ、新しい城下ってえのは、いい女子がおるというのは、よく聞くがのう。やはり、ここにもおるかね」

「伊助どんも好きじゃからのう。わしは、いっその事、ここに腰を落ち着けようかと思っとるんじゃ」

「着いたばかりで、なに寝ぼけた事を言っとるんじゃ。奈良の店はどうする」

「あんなもんはいいんじゃ。奈良は物騒だしのう。興福寺の坊主どもを相手にしてるより、こっちの方が儲かりそうじゃ」

「おぬしも、いい加減じゃのう」

「何とでも言え。それより、今晩、行ってみねえか」

「どこに」

「どこに、だと、決まってるわ、女子の所よ」

「そうだな、ご無沙汰してるからのう」

「わしは船着き場の辺りには行った事があるが、性海寺の参道の方はまだなんじゃ。噂では、大層、いい女子が揃っておるそうじゃ。どうじゃ、今晩、一緒に行ってみねえか」

「あそこか。わしも噂はよく聞くが、あそこは高そうだぞ」

「まあ、いい女子は高えさ。高えけど、一流の女子はいいものよ」

 伊助と次郎吉がのんきに女の話に熱中している時、阿修羅坊の手下の一人が太郎坊と八郎を見つけていた。

「お師匠、山伏や」と八郎が気づいた。

 市場の方から、こちらを見ている一人の山伏の姿が見えた。

「やっつけますか」と八郎は太郎の顔を窺った。

 太郎は首を横に振った。

「奴が阿修羅坊を連れて来るだろう。それまで待つんだ」

 山伏はしばらく二人を見ていたが、やがて、消えた。

 四半時(シハントキ、三十分)程して、阿修羅坊と四人の手下が市場に現れた。

 太郎と八郎は河原に座り込んだまま川の方を見ていた。

「確かに、あの二人だな」と阿修羅坊は一人の山伏に聞いた。

「間違いない」

「よし、向こうは川だ。こっちから取り囲んで奴を消そう」

 剣術の達人とは言え、やはり、まだ若い。戦を知らんな、と阿修羅坊は思った。しかし、太郎坊が少しも動かないのが変だった。もしかしたら罠かもしれん。

「気を付けろ!」と阿修羅坊が叫んだのと同時だった。

 手裏剣が草むらの中から飛んで来て、二人の山伏が悲鳴を挙げて倒れた。一人は目をやられ、もう一人は胸をやられていた。手裏剣は深く刺さり、二人とも即死だった。

 阿修羅坊が構える間もなかった。

 草むらの中から二人の裸の男が飛び出し、掛かって来た。太郎と八郎の二人だった。

 また一人、山伏が悲鳴をあげた。太郎の五尺棒に首の骨を折られていた。

 残るは、阿修羅坊と鉄の棒を振り回す日輪坊の二人だけとなった。

 日輪坊は八郎に任せ、太郎は阿修羅坊と対峙した。

「見事じゃな」と阿修羅坊は言った。

「大した事はない」と太郎は言って軽く笑った。

「殺すのは勿体ないが仕方がない。悪く思うな」

「まだ、死ぬわけにはいかない」

 阿修羅坊は太刀を抜いた。三尺はありそうな長い太刀だった。

 太郎は五尺の棒を構えた。

 お互いに隙はなかった。

 太郎は太陽を背にしていた。

 阿修羅坊はじわじわと体を横に移動させて行った。

「成程、若いわりには大した腕だ」と阿修羅坊は唸った。

「楓はどこだ」と太郎は聞いた。

「山の上の城の中じゃ」と阿修羅坊は答えた。

 二人は二間程(約四メートル)の間をおいたまま、睨み合っていた。

 一方、八郎と日輪坊は激しい闘いをしていた。八郎は刀、日輪坊は鉄の棒で闘っている。

 太郎と阿修羅坊の均衡を破ったのは、カラスの鳴き声だった。前もって、決めてあったかのように、二人は共に相手に掛かって行った。

 一瞬のうちに勝負は決まった。

 太郎の棒が阿修羅坊の右手首の骨を砕いていた。右手首を砕かれても、阿修羅坊は太刀を落とさなかった。左手で太刀を構えていた。

 八郎の方は日輪坊の腹を見事に横に斬っていた。

 太郎はとどめをさそうと、五尺棒で阿修羅坊の喉元を突いたが、阿修羅坊は後ろに飛びのいて避け、そのまま逃げ去って行った。

 太郎は後を追わなかった。

 昨夜、楓に会う前の太郎だったら、間違いなく阿修羅坊を生かしてはおかなかっただろう。しかし、楓から阿修羅坊の事を聞いてしまった今、楓のためにも阿修羅坊を殺す事ができなかった。楓は阿修羅坊を信頼していた。色々とお世話になったと言っていた。太郎は自分の命を狙っているのが、その阿修羅坊だとは楓には言えなかった。

 息を切らせながら、八郎が太郎の方に近づいて来た。

「ああ、死ぬかと思ったわ‥‥‥手ごわい奴やったわ」

「よく、やった」と太郎は八郎をねぎらった。

「お師匠、阿修羅坊の奴、逃がしちゃっていいんですか」

「ああ、仕方がない。しかし、あの腕では当分は太刀を持てんだろう」

「しかし、お師匠はやっぱり凄えな。あっという間に三人もやっつけるなんて、本に神業や。おらは一人がやっとや」

「がっかりするな。阿修羅坊の次に強いのが、あいつだ。それをお前は見事に倒した。もっと自信を持っていいぞ」

「そうやったんか、手ごわいはずや」

「これから、もっと手ごわい相手が現れるぞ。油断するなよ」

「えっ、まだ、敵がいるんですか」八郎は血の付いた刀を構えて、辺りをキョロキョロ見回した。

「阿修羅坊が、新たな敵をこの城下に連れて来るだろう」

「そうやな」と八郎は顔を引き締めて頷き、近くに倒れている山伏の着物で刀の血を拭うと鞘に納めた。

 二人の側に、乞食が二人、のそのそと近づいて来た。

 八郎が追い払おうとしたら、二人の乞食は顔を上げて、笑った。伊助と次郎吉の二人だった。

「さすがですな」と伊助は太郎を見ながら首を振っていた。

「わしらの出番はなかったのう」と次郎吉は臭い着物を脱ぎ捨てた。

「ずっと、いたのですか」と太郎は二人に聞いた。

「ええ」と伊助は笑った。「太郎坊殿に、もしもの事があったら松恵尼殿にどやされますからね」

「しかし、強いもんじゃのう。呆れるわ」と次郎吉はただ感心していた。

 太郎と八郎は、川の側で、二人に化けて座ったままでいる二人の所に行った。

「ありがとさん」と八郎は言って、二人の肩を叩いた。

 二人は崩れるように倒れた。倒れる時、二人の顔から何匹もの蛆虫がこぼれ落ちた。太郎と八郎に化けていたのは死体だった。朝、まだ、暗いうちに葬送地から運んで来たものだった。

 太郎たちは、その二つの腐った死体と、まだ、生暖かい四つの死体を葬送地まで運ぶと、川の水で体を清め、木賃宿へと帰って行った。
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